ノリコのお布団で添い寝ブログ

ファンシーな煩悩のOLさん

ヴァンパイア


まず…

ダメだ。吐くかと思った。
ベティブルーKOTOKOと共に歴代吐きそうになった映画に加えよう。

ホラー、ギャグ要素が強い映画での流血には寛容なんだけど、こういう映画ではダメなんだ。

さて。変態ってなんだろうと思う。
性欲、食欲、と人間は欲と共に生きている。
その欲をストレートに満たす行為では満たされない人々を変態と呼ぶ場合。
または欲の対象になり得ない行為や対象で欲が満たせてしまう場合もある。
自称ヴァンパイア、は欧米には一定数いるのだろう。
主人公サイモンもそういう人々と出会うシーンがある。
しかし、ただの猟奇趣味というかターゲットの血液だけではなくターゲットを凌辱することもセットにしている方もいる。
サイモンはそんな彼を変態だと罵るが、おまえもだろうと返される。

サイモンは自殺サイトで知り合った相手に楽に死ねる方法として血液を抜くことを提案するという、ちょっと紳士的?ヴァンパイアなのである。

変態の度合いなんて考えるだけ無意味だけど、果たしてどっちがより一層変態なのか、と考えてしまった。
というのも、恐らくサイモンも吸血鬼なんかじゃないと思うからである。

血を吐くシーンは勿論、高校教師として昼間から働き、家では痴呆症の母を抱えている。
彼が血液を欲する理由は分からない。だが、明確な理由が描かれていないから所謂ホンモノのヴァンパイアである、ということでもないと思う。

だが、どういった理由か、また、ホンモノであるか否か。
そういうことはほんとうにどうでもよくて、世間に顔向け出来ない生き方をしていることを自覚していて、いつも冴えない表情で毎日を淡々と生きている。
そういう、なんだか孤独なキャラクターを主軸とした束の間の魂の触れ合いをそーっと覗いている。
そんな映画なんだと思う。

世界はとても生きにくいけど、岩井俊二の映画にはさらに生きにくいことになってしまった、孤独を抱えたキャラクターがたくさん出てくる。
誰の中にも生きにくさや孤独って程度は違えど必ずあるのだと思う。
そういうナイーブな側面を作品に織り込むのがお家芸なのだけど、恥ずかしいくらいピュアで薄暗くて、そういう、大人が観るにはちょっと戸惑う作品。
嫌いじゃないんだよなあ。